国が認める温泉の健康効果!泉質ごとの症状と自宅で温泉効果を得る入浴法

日本で疲れを癒してくれるものといったら、「温泉」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

「温泉に入ると身も心もリラックスできて、心なしか体調も良くなるような……」

実は、温泉が心身の健康にもたらす効果は、化学的に証明されているんです。

この記事では、温泉に期待できる健康効果を泉質ごとに紹介します。

なかなか温泉へ行けない方のために、自宅のお風呂に温泉効果を取り入れる方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください!

1. 温泉が体によい3つの理由

温泉が体に良いといわれる理由は、3つの効果にあります。

まずは、お湯の中に体を沈めることではたらく「物理的効果」

これは自宅の湯船でも実感できる効果で、お湯の熱や浮力、水圧による、血行促進や筋肉・関節の負担軽減などがあります。

二つ目は「化学的効果」で、これはお湯の成分が皮膚から体内に吸収されることではたらくものです。

天然の温泉には土地によってさまざまな成分が含まれているため、成分ごとに期待できる効果は異なります。

三つ目は「総合的生体調整作用」です。

これは人間がもつ自然治癒力で体内のバランスが整う作用のことで、血圧の低下やホルモンバランスの正常化といった効果があります。

なぜこの効果があるのか、具体的な理由はまだ明らかになっていません。

しかし私たちが温泉にいくことで、気分が落ち着いたり疲れが取れたりするのは、確かにこの作用がはたらいているからなのです。

2. 温泉の種類と期待できる効果

温泉の定義や種類、その効果などは、環境省が定めていることをご存じですか?

環境省の定義によると、療養に役立つ泉質の温泉は「療養泉」と呼ばれており、それぞれに改善が期待できる症状(適応症)があります。

適応症は環境省が専門医の意見と最新の医学・化学的根拠をもとに決定したもの。

つまり先に紹介した3つの効果のうち、「化学的効果」は国で認められているんです。

また、適応症はすべての療養泉に当てはまる「一般適応症」と、泉質ごとに決められた「泉質別適応症」に分けられています。

すべての療養泉で効果が期待できる「一般適応症」は、以下の10種類です。

  • 筋肉や関節、神経の痛み(例:関節リウマチ、腰痛症、五十肩など)
  • 冷え症
  • 胃腸のはたらきの低下(例:胃もたれ、腸のガスだまりなど)
  • 軽い喘息・肺気腫
  • 軽症の高血圧・軽い高コレステロール血症
  • 痔の痛み
  • 耐糖能異常(糖尿病)
  • ストレスや自律神経の乱れによるさまざまな症状
  • 病後の回復期
  • 疲労回復・健康増進

ここからは療養泉の10個ある泉質のなかから、5つの泉質と代表的な温泉地、効果がある症状を紹介します。

2-1. 塩化物泉|保温効果が高い“熱の湯”

代表的な温泉地:秋保温泉(宮城県)/熱海温泉(静岡県)/城崎温泉(兵庫県)/指宿温泉(鹿児島県)など

塩化物泉は塩分を多く含む温泉で、入浴後の肌表面に残った塩分が汗を抑えて熱を逃がさないため、湯冷めしにくいのが特徴です。

適応症には切り傷、冷え症、うつ状態、肌の乾燥があります。

2-2. 炭酸水素塩泉|角質を柔らかくして美肌へ導く

代表的な温泉地:鳴子温泉(宮城県)/平湯温泉(岐阜県)/湯村温泉(兵庫県)/嬉野温泉(佐賀県)など

炭酸水素塩泉は、無色透明でアルカリ性の温泉です。

皮膚の表面にある角質が柔らかくなり、汚れが落ちやすくなるため、炭酸水素塩泉は「美肌の湯」とも呼ばれています。

適応症は切り傷や冷え症など。

飲むことで、胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、糖尿病、痛風などの改善が期待できます。

2-3. 硫酸塩泉|飲んで便通改善!?

代表的な温泉地:蔦温泉(青森県)/芦ノ牧温泉(福島県)/草津温泉(群馬県)/山中温泉(石川県)/河口湖温泉(山梨県)/玉造温泉(島根県)など

見た目は無色透明ですが、飲むと苦いのが硫酸塩泉です。

日本では数があまり多くないものの、古くから傷の治りを早くするとして戦国武将にも愛され、「傷の湯」として知られてきました。

適応症は切り傷や冷え症、肌の乾燥など。

また飲むと胆のうが収縮し、腸の動きが活発になることから、胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘への効果が期待されています。

2-4. 二酸化炭素泉|炭酸ガスで巡りが良くなる

代表的な温泉地:泡の湯温泉(山形県)/大塩温泉(福島県)/小坂温泉郷(岐阜県)/有馬温泉(兵庫県)/長湯温泉(大分県)/別府温泉(大分県)/湯の児温泉(熊本県)など

なかでも長湯温泉は、炭酸濃度、湧出量から「世界屈指の炭酸泉」、「日本有数の炭酸泉」とされています。

二酸化炭素泉は「単純炭酸泉」ともいい、炭酸ガスが溶け込んでいる温泉です。

入浴すると肌の表面に小さな気泡がつくことから、「泡の湯」とも呼ばれています。

炭酸ガスは、皮膚から吸収されて血管を広げてくれるため、血行促進に効果的。

血行が促進されることで、冷え症や自律神経の乱れからくる不調、高血圧などの改善が期待できます。

2-5. 硫黄泉|“湯の花”ができる温泉

代表的な温泉地:登別温泉(北海道)/草津温泉(群馬県)/別所温泉(長野県)/雲仙温泉(長崎県)など

硫黄泉は温泉らしい独特の匂いと、温泉の成分が固まってできる「湯の花」が特徴です。

殺菌力が強く、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の改善が期待されています。

また古い角質を柔らかくしてくれるため、ニキビや吹き出物などの慢性的な皮膚トラブルにも効果があるといわれています。

3. 入浴剤を使って自宅でも温泉気分!

温泉は健康に良いものですが、さまざまな事情で温泉に行けない・行きづらい方もいるのではないでしょうか。

そんなときは入浴剤を使って、自宅で温泉気分を味わってみましょう!

近年注目されているのは、自宅にいながら炭酸泉に近い効果を感じられる、重炭酸イオンが入った入浴剤です。

ほかにも保湿成分や生薬が配合されたものなど、入浴剤は多種多様。

成分の効果を期待するときは、有効成分が一定以上配合されている「医薬部外品」の入浴剤を選んでみてくださいね。

4. まとめ|温泉パワーで元気な冬を!

温泉は、お湯そのものの「物理的効果」と含まれる成分の「化学的効果」によって、心と体を健やかに保つ手助けをしてくれます。

ただし、泉質によっては体に合わない場合もあるので、各泉質の禁忌症は十分に確認してください。

また、自宅で温泉の効果を感じたいときは、医薬部外品の入浴剤を活用するのもおすすめです。 温泉のパワーで、寒い季節も心と体を元気に保っていきましょう!


【参考】

温泉に関する資料|環境省

温泉の医学的効果とその化学的根拠とは!? | 日本温泉協会

ホルモンや免疫の機能を整える「温泉の効果」|健康・医療トピックス|オムロン ヘルスケア

温泉の種類 – 日本秘湯を守る会 公式Webサイト