
仕事や家庭での出来事、有名人の発言、ゴシップ……。
生きるなかで、私たちは環境や情報に影響を受け、良くも悪くもさまざまな感情が芽生えます。
そんななか、近年はSNSが発達していることもあり、時としてネガティブな感情を「悪口」として発散してしまうこともあるでしょう。
しかし、悪口で心がすっきりするのは一瞬だけ。
悪口は自分の脳や体にダメージを与え、寿命を縮めることが科学的に判明しているんです。
この記事では「悪口」が人間の脳や体に与える影響を、世界の研究をもとに解説します。
あわせて、悪口を言わなくなる方法も紹介しますよ。
悪口を手放して、自分の人生をポジティブで健やかなものにしませんか?
目次
1. 悪口で認知症のリスクや死亡率が高まる!?

東フィンランド大学の研究では、他人に対する不信感や皮肉の気持ちが強いほど、認知症の発症や死亡のリスクが高くなると判明しています。
なぜ、悪口で認知症のリスクや死亡率が高まるのか。
精神科医の樺沢紫苑氏によると、その原因は「悪口が脳に大きなストレスを与えるから」だと考えられています。
悪口が脳に与えるストレスとその影響について、具体的な内容を確認していきましょう。
1-1. 脳が悪口でストレスを感じる仕組み
人の脳が悪口を認識すると、ストレスを受けたときに出る『コルチゾール』というホルモンが分泌されます。
コルチゾールが出るということは、自分の意識とは別に、悪口で体がストレスを受けているんです。
しかし「他人の悪口なのに、どうして自分にストレスがかかるの?」と思いますよね。
実は、人間の脳は『その悪口が誰に向けられたものなのか』を理解できません。
そのため他人の悪口を言っていても、脳は「自分が悪口を言われている」と判断してしまいます。
悪口を認識すると、脳は不安や恐怖を感じて警報装置である扁桃体を興奮させ、コルチゾールの分泌を促すのです。
1-2. 悪口によるストレスは身も心も傷つける
人の脳が悪口を感じとると、扁桃体が興奮し、コルチゾールが分泌されます。
扁桃体の反応とコルチゾールは、自分自身を危険から守るために備わっているもの。
しかしそのはたらきは、強まりすぎると心身へダメージを与えます。
以下は、扁桃体の過剰な興奮やコルチゾールの過剰分泌(副腎疲労を含む)で起こる症状の一例です。
- 慢性ストレスによるうつ病やパニック障害
- コルチゾールの免疫抑制作用による免疫力低下
- 体内の炎症悪化による倦怠感や疲れやすさ
- 脳の炎症による感情や記憶、認知機能の低下
上記のように、悪口は自分の体にストレスをかけ、心身の病気になるリスクを高めます。
悪口のストレスによって病気リスクが高まることで、研究で明らかになった「認知症や死亡リスクの上昇」につながると考えられているのです。
2. 悪口がもつ「依存性」

悪口を言い始めると、つい止まらなくなってしまうことがありませんか?
それは悪口をいうことで、快感や幸福感を与える脳内物質の「ドーパミン」が脳内で放出されることが原因です。
脳にとってドーパミンの快楽はこの上なく、人はより大きな快楽を得るために、その行動を繰り返したくなります。
悪口をいうことでドーパミンの快楽を得て、さらにドーパミンを出すために悪口が続いていく……。
これが悪口を止められない理由であり、悪口の依存性なのです。
しかし先ほど解説したように、人間は悪口で快楽を得ながら、体ではストレスを感じています。
悪口の快感に依存して悪口を繰り返していたら、どれだけのストレスが自分にかかるのか、想像するだけでこわくなりますね。
3. 悪口を手放す方法|自分を褒めて心を満たす

悪口を言ってしまう原因は、依存性に加えて「自己肯定感の低さ」もあげられます。
悪口を言いたくなるタイミングとは、どんなときでしょうか。
- 自分のことを批判されたと感じたとき
- 自分が劣っていると感じたとき
- 自分のなかの正義や正しさに反することをされたとき
落ち着いて考えると、上記に当てはまることが多いのではないかと思います。
このどれもが、自己肯定感の低さから起こること。
悪口で相手を貶めて「自分はこの人より上だ」「この人に指摘できる自分は優れている」と感じることで、自分の存在価値を確かめているのです。
つまり悪口を手放すためには、自分で自分を認めること=自己肯定感を高めることが重要になります。
悪口を言いたくなったときには、少し強引にでも自分を褒めるようにしましょう。
「朝、ちゃんと起きられた」
「遅刻せず仕事に行けた」
「ご飯をおいしく食べられた」
最初は馬鹿馬鹿しいと感じるかもしれませんが、自分を認める言葉を心の中にためていくことで、少しずつ自己肯定感も高まっていきます。
誰かにネガティブな言葉をかけるのではなく、自分にポジティブな言葉をかけて、悪口を手放してみませんか?
4. まとめ|悪口を手放して自分の人生をより良くしよう!
悪口は、つい口から出たり、誰かと言い合うと盛り上がって止まらなくなったりしてしまうもの。
しかし、悪口は言えば言うほど依存しやすく、将来的には自分の心身を傷つけてしまう行為です。
ご紹介した方法を参考に、自分を認める言葉で心を満たして、少しずつネガティブな言葉を手放していってみませんか?
【参考】
批判や皮肉が認知症リスクを高める!?|脳のはなし|Active Brain CLUB
よく悪口を言う人ほど「不幸になる」科学的根拠 楽しいのは一瞬だけ「人を呪わば穴二つ」 | 健康 | 東洋経済オンライン
樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』悪口を言うことが体に及ぼす悪影響 | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]
2017年11月号 第32話 扁桃体をモニターする | 一般社団法人草津栗東医師会公式サイト