緑内障は日本人における失明の原因第一位。
眼圧が高くなること以外の原因がはっきりしていないため、予防が難しい病気でもあります。
しかし近年、飲酒が緑内障のリスクを高めるという研究結果が、相次いで発表されているんです。
この記事では研究論文をもとに、飲酒と緑内障の関係について解説します。
目次
1. 飲酒と緑内障の関係
緑内障とは、何らかの原因で視神経に障害が起き、視野が狭くなる病気です。
2024年現在、酒に含まれるアルコールが視神経に直接影響を与えるという研究結果は出ていません。
しかし世界で行われている研究では、長期的な飲酒習慣で緑内障リスクが高まることが判明しているのです。
飲酒と緑内障の関係性について、知っておきたいポイントを見ていきましょう。
1-1. ビール約0.7缶ごとに緑内障リスクが9%上昇
飲酒習慣と緑内障の関係について研究をおこなったのは、慶應義塾大学医学部眼科学教室の研究チーム。
同チームは2022年8月、米国の国際学術誌にて『長期間の飲酒で、落屑緑内障(らくせつりょくないしょう)の発症リスクが高まる』との研究結果を発表しました。
約20万人を28年以上にわたって追跡したところ、1日の飲酒量がエタノール換算で10g増えると、緑内障の発生率が9%上昇することが明らかになったのです。
エタノール10gを一般的なお酒に置き換えると、以下のとおり。
- ビール(5%)……250ml(350ml缶で約0.7缶)
- ワイン(12.5%)……100ml
- ウイスキー(43%)……30ml(一般的に「シングル」と呼ばれる量)
- 日本酒(15%)……90ml(約0.5合)
日頃の飲酒量にもよりますが、「案外少ないな」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「ビールをもう一本」「お猪口でもう一杯」が積み重なることで、実は緑内障のリスクがじわじわと高まっているかもしれません。[1]
1-2. お酒の種類で緑内障のリスク上昇率が異なる!?
慶應義塾大学の同研究では、緑内障リスクは飲んだお酒の種類によっても異なることが判明しています。
同じ量で比較した場合、もっとも緑内障リスクが高まるのはウイスキー。次いでワイン、ビールの順でリスクを示す数値は低くなったとのことです。
上記はアルコール度数の高さと比例しているため、お酒の種類ではなく、単純にアルコールの摂取量が関係しているとも考えられます。
ただし、例外的な結果が認められたのが『赤ワイン』。
十分なデータではないものの、赤ワインだけは緑内障のリスクを示す数値が下がったと認められたのです。
研究チームは「赤ワインの抗酸化作用が神経保護に働いた可能性も考えられます」としています。
2. 禁酒が進行を遅らせる?緑内障患者の飲酒リスク
継続的な飲酒は、少なからず緑内障の発症との関係が認められています。
一方で、緑内障と診断された方が飲酒を控えた場合、緑内障の進行を遅らせることができるとの研究結果も出ているのです。
2023年に韓国・ソウル大学病院でおこなわれた研究では、緑内障と診断後に飲酒をやめた人は、診断後に飲酒を続けた人に比べて、重症化や失明のリスクが低下すると明らかになっています。
また飲酒の頻度を週3回以下にした場合、禁酒した人と比べて緑内障の重症化リスクに大きな差はなかったとのこと。
一日に飲む量は気をつける必要がありますが、お酒の量を減らすだけでも、緑内障の進行を抑える効果が期待できるでしょう。[2]
3. まとめ
緑内障は予防が難しく、完治しない目の病気です。かつては眼圧の上昇が原因とされていましたが、近年では正常な眼圧の範囲内であっても、緑内障になる方が増えています。
発症率は、40歳以上の20人に1人。
自分の大切な目を守るためにも、飲酒をはじめとした生活習慣の改善と定期的な眼科検診で、緑内障を予防・早期発見しましょう!
【参考】
[1]長期間の飲酒行動と落屑らくせつ緑内障発症リスクとの関連 -大規模疫学コホートを用いた追跡調査からの成果-
[2]Visual Impairment Risk After Alcohol Abstinence in Patients With Newly Diagnosed Open-Angle Glaucoma
2022年9月発表の論文-慶應義塾大学、米国
長期間の飲酒行動と落屑らくせつ緑内障発症リスクとの関連 -大規模疫学コホートを用いた追跡調査からの成果- (慶應義塾大学 プレスリリース)
2023年10月発表の論文-韓国
時事メディカル:https://medical.jiji.com/news/57808
要約:https://chat.openai.com/share/e3171fc2-80ca-4853-b05b-748d36c0ce3f