歳をとると、膝や腰が痛い、つまずきやすくなった、など、身体のあちこちが動かなくなってくる。そんなことをぼやいていた母が知り合いに勧められて始めたのが、「自力整体」。
整体と聞くと、整体師にマッサージをしてもらう、というイメージがあるが、自力整体は、その名の通り、自力で身体を整える、いわば身体を緩ませるストレッチのようなものだそうだ。
気持ちいいよ、一回やってみたら?と母に誘われ、私も興味本位で教室に参加することにした。身体や脳や目が凝り固まって、寝つきが悪く、眠りも浅いのが私の最近の悩みだったからだ。
これ、レッスンで使うから、と一人暮らしの私のもとに母から送られてきたのは、長めのフェイスタオルを2枚縫い合わせて輪っかにした、通称「輪っかタオル」。
ヨガマットを敷き、パソコンを前に置いて座る。今までは公民館に集まってレッスンをしていたそうだが、オンラインレッスンに移行してからは、自宅から気軽に受けられるようになったらしい。どこにいても参加できるし、周りの目を気にしなくていいのが良い。
「こんにちは、インストラクターの山崎です。今日はよろしくお願いします」
笑顔の素敵な小柄な女性が画面に映った。広いリビングに大きなマットが敷いてあり、その横で大きなゴールデンレトリバーが昼寝をしているのが微笑ましい。
「自力整体というのは、凝り固まっているところをほぐして、身体をゆるませるのがポイントです。無理せず、ゆるゆるとやってみてくださいね。あくびもどんどんしてください。涙や鼻水も出ますが、遠慮なく流してくださいね」
なるほど、ダラダラすることなら得意だ。
簡単な説明をうけ、ゆるゆるとレッスンは始まった。
さっそく輪っかを両手に持って、上に伸びをする。確かに肩こりに効きそうだ。
今度は寝転んで、輪っかタオルを片足に掛けて引っ張る。これもまた足の裏が伸びて気持ちがいい。日常生活で、凝り固まりがちな肩や腰、疲れやすい目などをほぐしていく。身体の筋肉は全体とつながっているので、実際手首のあたりを緩ませると身体の別の部位がほぐれたりするから、筋肉は全身繋がっているのだと実感する。
だが、ヨガを何回かやったことがある私にとって、一つ一つの動作があまりにもゆっくりで、またひとつのポーズに時間をかける自力整体は、少し退屈に感じた。効果を早く感じたくて、ついつい力を入れてストレッチしてしまう。
途中で休憩を入れながら、90分のレッスンが終わった。
最初受けた時は、よくわからないなぁというのが正直な感想だった。その後、何回か受けているうちに余分な力が抜けて来て、少しずつ身体をほぐせるようになってきた。
そのうち、レッスンが終わった後にはとても眠たくなり、よく眠れるようになった。
身体をほぐすと、心もほぐれるとはこういうことか。
そのうちお風呂上りや、テレビを見ながら、輪っかタオルを手にし、ストレッチをするようになった。輪っかに手を入れて握り、手を上にあげてタオルを引っ張り合う。すると肩甲骨あたりの筋肉のストレッチに。そのまま前傾したり、左右にゆらゆら揺れると、背中や脇、腰など、いろんな場所の筋肉が伸びるのを感じる。
自分の身体が気持ちいいと感じる部分を伸ばせればそれだけでもすっきりする。日常のすき間時間に取り入れて、頑張らないで続けてみようと思った。
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