カタグリくんのヒミツ

作者:伊藤有輝子

満月の光がやさしく森を包み込む、そんな幻想的なある夜。

ブルブルくんとアイアイちゃん、紫々丸くんが森を散歩していると、

「う~ん、う~ん」

と、どこからか、うめき声が聞こえてきました。

「なんや?!」

あわててみんなが声のする方へ駆けつけると、そこにはカタグリくんの姿が。

「どうしたの?カタグリくん?お腹いたいの?」紫々丸くんが心配そうに声をかけます。

「違うんだぞー、実はおいら、みんなみたいに大きなぱっちりした目になりたくて、夜中にこっそり特訓していたんだぞー」

たしかにカタグリくんの目は一直線。今までだれも目を開いた姿を見たことはありません。

「こうやって、力を入れて、開こうとしてるばってん、開かないんだぞー」カタグリくんの目が大きく開いたら、どんな顔になるんやろ?

ブルブルくんは興味津々でカタグリくんの顔をジーと見つめます。

「よし、ほんなら、カタグリくんの目が開くように手伝ったろ。」

「そうね、なにかにビックリしたら、目が大きく開くんじゃないかしら?」アイアイちゃんのアドバイスに、

「じゃあ、ボクがカタグリくんをビックリさせるよ。いい?わー」

・・・。

「紫々丸くんがやってもぜんぜん迫力ないな・・・」

「じゃあ、すごく美味しいものを見たら目が輝いて開くんじゃない?」

と言って、アイアイちゃんは手作りのクッキーを見せました。

「うわーおいしそうなんだぞー」

大きく開いたのはカタグリくんの口で、目はいっこうに開きません。

「こうなったら、ボクのアントシアニンパワーで・・・」

「いかん!これはおいらの問題だから、おいら自身の力で切り開いてみせるんだぞー」そう言うと、カタグリくんは、全身全霊の力を込めて、目に集中しました。

「うおぉぉぉぉ!」

『がんばれ!カタグリくんっ!』

すると、なんと、カタグリくんの目が開きはじめました!

「ふんぬっ!!!」

ついに大きく開かれたカタグリくんの目から、まばゆい光が飛び出し、その光線は天を切り裂き、ついには月まで届き、月を真っ二つに割ってしまいました!

「・・・・んなアホな・・・!」

「・・・っくん、ブルブルくん。」

アイアイちゃんに揺さぶられて、ハッと我に返るブルブルくん。

「どうしたの?ぼーっとしちゃって」

「い、いや、なんでもないで」

カタグリくんの開いた目が見てみたくて、つい想像の翼を広げてしまったブルブルくんなのでした。

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