ダラダラ生活から脱却せよ!  【作者:石田里沙子】

バイト先から帰ってきた私は、クタクタの状態で自分のベッドに寝転がった。

ふぅーと一息つきながらスマホから取り出し、TikTokを見て笑う。

大学が春休みに入ってから、ずっとこんな生活を送っている。

コンコンッ

「ちょっといい?」

お姉ちゃんの声だ。

「はぁ…お母さんが心配する気持ち、わかるわ」

私の姿を見るなり、呆れた顔をする。

「えっ?どういうこと?」

「春休みになって二週間経つのに、ずっとダラダラしているあんたが心配だって」

「またそれ?今だけじゃん。大学始まったらこんな生活送れないんだから」

「だからって二ヵ月間もある春休み、ずっとそうやって過ごすつもり⁉」

「ゔ……」

「その顔は図星ね」

お姉ちゃんは少し考えてから、口に出した。

「あんた、明日から毎日ランニングしなさい」

……

「はあ⁉」

私の大きな声を聞いて「何事?」とお母さんがやってきた。

「お母さん、明日から春奈ランニングするって」

「ちょっと勝手なこと言わないでよ」

「あら! いいじゃない。お姉ちゃんも毎日ランニングしてるんだし、お姉ちゃんと一緒にランニング始めなさいよ!」

お母さんは私の返答を聞くことなく、笑顔でリビングに戻っていった。

「ってことで、あんた明日七時起きね」

そう言ってお姉ちゃんはどこかへ行った。

走ることなんて大嫌いなのに誰がやるもんか。

だけど、この春から家を出るお姉ちゃんのために最後くらい言うことを聞いてあげようかなと思った。

翌日の七時。お姉ちゃんが起こしにきた。

しかも、普段運動をまったくしない私のためにランニングウェアとランニングシューズをプレゼントしてくれた。

渋々着替えた私だったが、やる気が起きない。

「ランニングやって何になるの~。ただしんどいだけじゃん」

「あんた、バイト終わったらすごく疲れた顔をして帰ってくるけど、いつも?」

「うん……そういえば電車に乗るために久しぶりに走ったら息切れがすごかったな」

「運動不足だね。ランニングは普段運動をしていない人にとって最初こそはしんどいかもしれないけど、慣れたらきっと楽しくなるよ」

昔から走るのが嫌いで、特に持久走なんて最悪だった。走ることに楽しさなんてあるのか?

「ランニングを毎日続けると体力や筋力がつくだけじゃなく、心身のリフレッシュやストレス解消にもなるし、寝つきも良くなるから生活リズムも整うわよ!」

心の中は嫌だ、面倒という気持ちでいっぱいだったが、心の隅っこにはせっかくの春休みをダラダラ生活のままで終わっていいのか? という不安もあった。

「全然気が進まないのはたしかだけど、ダラダラ生活から脱却するために頑張ってみる…」

「よし! じゃあ、ランニング始めるわよ!」

「ちょっと待って。ランニングって結構早いペースで走るよね? 私絶対そんなペースで走れないよ……」

「大丈夫! 最初は1kmぐらいの短い距離をゆっくり走るわよ。いきなり長い距離をハイペースで走ると体に負担をかけてしまうから、少しずつ走って体を慣らすことが大切!」

言われた通り、無理のない程度にゆっくり走り始めた。

久しぶりに走ったからか、いつの間にか力みながら走っていた。それに気づいたお姉ちゃんが

「春奈、首や肩に力が入りすぎないようにリラックスしながら背筋を伸ばすと効率良く走れるよ」とすぐさま教えてくれた。

なんとか走り終えたあとは良い汗もかけて、リフレッシュできている自分がいた。

翌朝。普段運動をまったくしない私の体にある異変が起きた。

それは、筋肉痛。

お姉ちゃんから予告はされていたが、想像以上の痛さだ。

筋肉痛は不慣れな運動や激しい運動によって筋肉の繊維に炎症が起きている状態で、痛みを緩和するためには血行を良くすることが必要なんだそう。

その日、私は珍しくちゃんと浴槽に入って体を温め、筋肉を伸ばすためのストレッチを行なった。

筋肉を伸ばしてみるととても気持ちが良い。

ランニングを始める前は嫌だったが、走った後の爽快感や筋肉痛も普段あんまり頑張らない自分にとって新鮮で、いつの間にか走ることが楽しさへとつながった。

さらに、ランニング習慣を始めたおかげでスマホ依存症による昼夜逆転生活まで改善されたのだった。

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作者:石田 里沙子