「ん~、首が痛い」
朝起きて、伸びをしながら首の痛みを堪える。
もともと身体が硬く、肩や首が凝りやすいほうだったのだが最近は特にひどい。
それに加えて寝つきも悪く、疲れが溜まる一方なのが悩みだ。
ある休みの日、特にやることがなかったのでなんとなく近所のショッピングモールに向かった。
ふとモールの一角に「まくら専門店」と書かれた店が目に入った。
フロアの壁にはいろんな形をした枕が並べられている。
「こんなお店あったんだ!」
興味本位で入ってみることにした。
飾られている枕を触っていると、ビーズタイプのものや羽根タイプのものなど中身によって感触が違っていて面白い。
「こんにちは。よかったらお試ししてみませんか?」
店員さんが話しかけてきた。
こういう店員さんの声掛けに私はめっぽう弱い。
断る勇気がなく「じゃあ、お願いします」と言ってベッドに寝転がる。
「枕の高さはいかがですか?」
店員さんは私の様子を伺いながら聞いてくる。
「少し高いです……かね?」
正直、枕の違いなどわからない。
「ちなみに今はどんな枕をお使いですか?」
「そうですね~、これが近いかもです」
店員さんが持ってきてくれた複数の枕の中から一番近いものを選ぶ。
「こちらのわたタイプのものですね!今お使いの枕はいつから使われていますか?」
店員さんの問いに一瞬思考停止した。
「今の枕ですか……?え~、いつだろう?」
「多分引っ越ししたタイミングだったんで五年前とかだと思います」
記憶を辿りながら答える。
「実は、枕にも変え時があるってご存じですか?」
店員さんが手元の枕のサンプルを見せながら説明してくれる。
わたタイプや羽根タイプ、低反発タイプのウレタンは二、三年、パイプ素材でも三から五年が寿命とのこと。
「なので、今お使いの枕はもうへたってしまって身体に合っていないのかもしれないですね!」
「枕に変え時があるなんて知らなかったです!」
驚いている私を見ながら店員さんは続ける。
「枕は体重の八から十パーセントを占めている頭の重さを支えていますからね。長く使い続けていくうちに少しずつ中身がへたってしまって、高さが低くなったり、硬くなったりしてしまうので、耐久性や衛生面を考えた上の適切な買い替え時期になります。」
「それに自分に合った枕で寝ていただくことで快適な眠りにつながり疲れも取れやすくなりますので!」
なるほど! 五年もの間買い替えることなく使い続けていたのが、首の疲れを悪化させていたのか?と妙に納得した。
「今日お時間があるようでしたらいろいろ試して、ご自身に合った枕を見つけてください!」
店員さんは笑顔で私に好みなどを聞きながら、いろんな枕を試させてくれた。
「これってなんですか?」
「こちらは磁気枕という枕です」
「中に入っている磁気が血行を促進するように働きかけてくれて、肩や首のコリを解消してくれるんですよ。よろしければお試ししてみますか?」
首のコリに効くと聞けば試さずにはいられない。
実際に試してみると少し磁気が頭に当たっているような感じもしたが、高さなども調整できて、あれこれと試した中で一番気になった。
「この磁気枕にします!」
思いがけず良い買い物ができたと気分よく家路につく。
家に帰ってすぐに今朝まで使っていた枕を確認する。
「へたへただ……これで俺はずっと寝ていたのか」
朝はなんとも思わなかった枕が今日の出来事だけで全然違って見える。
我ながら単純なやつだ。
早速、買ってきた磁気枕と交換した。
使いはじめはそんなに首のコリが軽減した感じはしなかったが、使い続けていくうちに少しずつマシになっていくように感じた。
「枕って、すげ~!」
そこから定期的に「まくら専門店」に足を運んでは自分に合う枕を探して買い替えている。
毎日、ひつじを数えるヒマもないくらい快適な睡眠生活が送れている。
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