魔女の一撃 【作者:池邨麻衣】

ギクッ!!!!

朝、起きようとした瞬間、私の腰から悲鳴がした。

自分の身に何が起こったのかすぐにはわからなかった。

ピクリとも動けない。

腰の激痛によりこれは現実だと突きつけられる。

「ぎっくり腰だ……」

私がぎっくり腰?この年齢で?なんで?

ゆ~っくりゆ~っくり動こうとするが、痛い。

歩くこともままならないほど痛い。

これでは会社に行けないと悟り、すぐに上司に電話をする。

しばらくベッドで横になり、安静にする。

もう大丈夫かなと思って動くと腰から痛みが襲う。

それを何回か繰り返しているだけで午前中が終わってしまった。

このままではヤバいと腰の痛みを極力感じない体勢を探し始める。

腰に負担がない姿勢になりながら、いつもの倍以上の時間をかけて病院に行く準備をする。

ふと全身鏡に映った自分と目があった。

なんとも情けない。

誰にも見られていないのが幸いなほど、不格好だ。

だが、今はなりふり構ってはいられない。

この体勢がベストポジションなのだ。

タクシーを呼んで病院に行く。

「あ~、ぎっくり腰ですね」

先生は笑顔で言う。

ぎっくり腰の状態を診るために腰の様子を確認しながら、質問してくる先生。

だが、そのたびに腰から痛みが走るので早くその手をどけてくれないかと思いながら、軽く睨むが効果はない。

「そんなにひどくはないので、コルセットと痛み止めで治りますよ」

「ただ、ぎっくり腰は癖になりやすい人が多いので気をつけてくださいね」

なんだすぐに治るのか。いや、でもまたこの痛みを経験するかもしれない?

先生の言葉に安堵と不安が同時に押し寄せる。

どんよりした気持ちのまま病院を後にした。

数日はコルセットと痛み止めは必須だったが、ほどなくすると日常生活を問題なく過ごすことができるまで回復した。

だが、先生の「ぎっくり腰は癖になりやすい人が多い」という言葉が頭から離れない。

朝晩寝るときには、明日目が覚めてまたぎっくり腰になったらどうしようという不安が押し寄せてくるのだ。

その日はなかなか寝つけなかったので、スマホを取り出してぎっくり腰について検索してみた。

「ぎっくり腰 治し方」

「ぎっくり腰 知恵袋」

「ぎっくり腰 原因」

出るわ、出るわ。

そこには私と同じような経験をした仲間たちが溢れていた。

少し気持ちが楽になった。

あの腰にきた激しい痛みは別名「魔女の一撃」とも言われているらしい。

なるほど、うまい表現だ。

いろいろネット情報を見ている中で、自分と似た年齢の人が書いている体験談ブログ的なものを見つけた。

そこには『寝たまま腰伸ばしストレッチ』で予防をしていると、その内容が紹介されていた。

記事に書かれているストレッチを試しにやってみた。

仰向けになり、立てた両膝をゆっくりと胸に近づける。

たったこれだけ。

本当に仰向けになりながらゆっくり動かすだけなので、簡単だ。

膝を胸に近づけたときに腰が伸びるのが気持ち良い。

腰の筋肉をゆっくり伸ばしてあげることで再発防止につながるとのこと。

朝起きたときと夜寝る前にベッドに入ったままできるので、私でも続けられそうだ。

早速、その日の夜からやってみる。

ゆっくり深呼吸をしながら無理のない程度でやる。

これが私のルール。

毎日繰り返すことで、少しずつ身体も楽になってきた。

朝と夜のストレッチに加えて、会社でも休憩がてら伸びなどのストレッチをすることが自然に意識づいてきた。

ぎっくり腰になる前はまったく運動せず、会社と家との往復しかしていなかった。

しかも、コールセンター勤務のため一日中ずっと椅子に座りながらお客様対応の日々。

同じ姿勢ばかりで腰への負担が積もり積もって、ぎっくり腰になったのだ。

だが今はもう、そのころの私はいない。

毎日のちょっとしたストレッチと意識の変化で疲れが取れやすい身体を手にいれた。

朝もスッキリ爽快な目覚めで迎えられている。

よし今日も、私も腰も絶好調だ!

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作者:池邨 麻衣