息子がくれたカレンダー 【作者:林明美】

ポカポカ陽気の春到来!

寒さでちぢこまっていた筋肉が一気に緩んでいくのを感じる。同じように植物たちにもこの日差しが降りそそぎ、ほのかな春の香りが漂いだした。

が、しかし…

現実を直視せざるを得ない季節でもある。これまでふかふかのセーターにダウンジャケットで身を包みごまかしていた私の身体にはたっぷりのお肉が…(泣)

私は一念発起し息子が送ってくれた壁掛けカレンダーを活用することにした。

息子はというと地元のスポーツメーカーで三年働き昨年退職した。学生時代にチャレンジしたかった「青年海外協力隊」への想いが急に頭の中を駆け巡ったそうだ。私に言わせれば体の良い言い訳かと思ったが、本人は至って真剣だった。異国の文化や人々の生活を知り、自分ができることで役に立ちたいと私を説得しキルギスへと旅立った。

ある日音沙汰がなかった息子から手紙とキルギスの風景が写っているカレンダーが届いた。私は目に付くところに掛け、頑張っている息子を毎日応援することにした。

そこで私は思いついた。このカレンダーを活用して健康管理してみようと。毎朝測った体重を日記代わりに書き込み始めた。

実行し続けて一年が経ったころ、息子から一時帰国するとの連絡が入った。

私は帰国当日、息子の好物を買い込み自宅に戻ると、リビングから懐かしい声が聞こえてきた。

「母ちゃん、お帰り」

 懐かしい息子の声が聞こえてきた。

「あらぁ!早かったのねえ。元気だった?夕方に帰ってくるって言ってなかったっけ?」

「早く母ちゃんの顔見たくてさ…」

「よく言うわ、早く顔を見たかったなら、何で月に一度くらい連絡くれないのよ。ただでさえ外国暮らしで心配しているのに」

「ごめん、ごめん…、一緒に住んでいたときは感じなかったけど、我が家の匂いっていいね。ホッとするよ!」

「ところでさ、カレンダーにメモしているこの数字って何?」

「ああ、これ?私の体重。恭平がこのカレンダーを送ってくれてから書き始めたの。そろそろ健康のことも考えようかなと思ってね。最初は食べた物を書いていくレコーディングダイエットっていうのが流行っていたからやってみようと思ったんだけどね、毎日毎食書くのは私には無理そうだったから諦めて、体重計に乗ってその日の体重をメモするぐらいはできるかなと思ってね。そしたらさ、三日坊主の私が続けられているのよ」

「へー、それはすごいな。書くだけで効果があるの?」

私は始めた月のカレンダーをめくり、

「ね!見て!始めたときと今とでは5kg違うのよ。いきなりドーンって落ちたわけでもなく徐々に落ちていって、気がつけば5kgも減量できていたの。私も驚き!書いて目に付く所に掛けておくのがコツで、毎日現実を直視せざるを得ないし自然と食べる物や食べる時間帯などを意識するようになったことが良いみたい」

「そう言われてみれば母ちゃん若返ったね。あれ、あのポッコリお腹も?

顔の色艶も良いし、俺がいなくなって老け込んでいたらどうしようと心配していたけど、安心したよ」

「ホント!久しぶりに会ったのに嬉しいこと言ってくれるじゃない。書き始めてから自然と食べ過ぎなくなったし、食べ過ぎた次の日はセーブしなきゃって思えるようになったし、今まではどこへ行くにも自転車や車を使っていたじゃない?今は歩くのが趣味になってね、身も心も軽くなって快適なの!」

「そりゃ良かった!」

「ところで、今回大事な話があるって言っていたけど何の話?」

「ああ、あとで話そうと思っていたんだけど、実は俺、結婚したい女性がいるんだ」

 予想もしていなかった息子の言葉に、私のとっさに出た言葉が

「えっ、もしかしてキルギスの女性?」

「察しが良いねえ、母ちゃん」

一瞬驚いたが、今の時代国際結婚も珍しくもないし、どんなお嫁さんがきてくれるのか一つ楽しみが増えた。

しばらくして、キルギスに戻った息子からお嫁さんの写真と一緒に新しいカレンダーが送られて来た。

私は早速、新しいカレンダーに掛け替え、いつものように体重計に乗りカレンダーに記録した。

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作者:林 明美