子育ても一段落した48歳。自分の時間を多くとれるようになった今、ふと生涯を通して楽しめる趣味を持ちたくなった。
元気に老後を送るためにも、今からの準備が大事。そう思った私は、これまでテニスや水泳、ヨガ、ジムなど、誘われるがままにやってみた…。が、残念ながら続かない。
健康のためによいとわかってはいても、それだけで続けるのは飽きっぽい私には難しいとわかった。続けるためには、+αがないと…。
そんなとき、ふと四つ年上のいつも元気な同僚の、和子さんの笑顔が頭に浮かんだ。
一つのことに興味を持つとトコトン極めるまでやり続けるまさに猪突猛進タイプの彼女。その彼女が今夢中になっているもの、それが「登山」。以前と比べると、シルエットも激変!二回りほどスリムになった彼女から何かヒントが見つけられるかも…。
翌朝、私は彼女の出社を首を長くして待っていた。
「和子さんおはよう!」
「美和さんおはよう!あら、今日は早いわね、何かあったっけ?」
「いや、何もないんだけど和子さんに尋ねたいことがあって、今日ランチでも一緒にどう?」
「あらいいわね、今日はお弁当持ってきてなかったからちょうど良かったわ!」
お昼休み私たちは会社近くのカフェに入った。
「それで美和さん尋ねたいことって何?」
「最近和子さん登山始めたわよね?どう?楽しい?」
「今までいろんなことに趣味を持ってやってきたけどこれが一番楽しいわ。なんてったって山頂からの眺めは最高!周りに遮る建物もなく、目の前には広い空が広がっていて手を伸ばすと雲を掴めるような非日常的な世界を感じられるの。山頂から私たちが住んでいる街を探すけど小さくて何も見えない。なんかね、日々の悩みやストレスもちっぽけなものに見えてくるの。登山は最高よ!」
和子さんは勢いよく話を続ける
「美和さんも知っての通り、私って以前はかなりポッチャリしてたでしょ?
血圧も高めでどうにかしないとなって思っていたときに登山を始めてみたの!
そしたらこの一年で体脂肪率も血圧も下がって、趣味と同時に健康も手に入れられた感じ!」
彼女の話には説得力があり、話を聞くにつれ自分もやってみたいと思った。とはいえ、まだ「楽しそう…」という気持ちはあるものの、自分が続けられるのかはまだ自信がない。
それから一カ月後、自分自身に勢いをつけてついに「山ガール」デビューを果たした。
自分には縁がないと思っていた「山ガール」という言葉。ひと昔前にアウトドアブランドの会社が山の中でファッションショーを実施したのがきっかけで女性たちの間で登山ブームが巻き起こったと記憶している。
私の「山ガール」デビュー日は、秋晴れのさわやかな日。だが、楽しいと感じるにはほど遠かった。息が切れるほどの難所、意識して歩かないと滑ってしまいそうな危険な場所。
しかし、苦労していきついた山頂からの眺めは最高だった。和子さんから聞いていた話以上の感動が味わえた。
感動はそれだけにおさまらず。溢れんばかりの汗をシャワーで洗い流すと、味わったことのない爽快感。汗をかくこと、運動をすること、そして何より達成感を味わうことの大切さを感じた。
運動不足の代償として翌朝、筋肉痛で身体のあちこちが痛んだ。あまりの痛さに果たして登山は「趣味」なのだろうかと疑問に思ったが、二、三日したらその筋肉痛も和らぎ次の週末には驚くほど身体が軽くなっていた。
回数を重ねるごとに、私の身体が鍛えられ、少し登っただけで息がきれることはなくなった。その後、登山前には必ず筋肉痛予防のためにアミノ酸サプリを摂るなど、快適な登山を楽しむ術も身に着けた。
登山は身体を動かせるだけでなく、山の空気、木漏れ日、土のにおい、広がる景色。自然の中から視覚、聴覚、皮膚感覚に刺激が得られるなどメリットも多い。そして、私が好きなキーワード「自然・植物・健康・運動」すべてが網羅されている。
一山登るごとに登山グッズも増え、体力も増しているのを実感。登山は私の生涯楽しめる趣味となりつつある。
趣味を続けるためには、健康によいだけでなく、+αがないと…続かないと思っていた。
登山が趣味と言えるようになった今、その+αは「達成感」なのかもしれない。
さあ、次は日本の最高峰、富士山を目指してみよう!
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