春の嵐

2023-10-18
作者:木佐貫 瀬那

ここは森の中の小さな古びれたビルの中、あまり人が出入りすることはないんだけど、ちょこちょこお客さんがやってくる。

カラン

「こんにちは」

今日のお客さんは、アイアイちゃん。

「困っているの。ブルブルくん。手を貸して」

「もちろん。どうしたの?」

アイアイちゃんは大きな瞳を手で擦る。

「実は最近、とっても目が痒いのよ。それでね、話を聞いたら、紫々丸くんも痒いんだけど、カタグリくんは平気だって言うの。目が痒いんで我慢できずに擦っていると、いつのまにか荷物まで無くなってしまうのよ!きっと犯人はカタグリくんよね、ブルブルくん」

アイアイちゃんは興奮した様子で詰め寄ってくる。ブルブルくんは頬をぽっと赤らめた。

「少し時間をおくれ。必ず僕が解決してみせるで」

それから数日後、瞳を真っ赤にしたブルブルくんがやってきた。

「ブルブルくん、いったいどうしたの?大丈夫?」

「大丈夫。犯人が分かったで。この目は、その犯人の仕業や」 ブルブルくんは目薬を差し、頭の上にある口にマスクをつけた。

「犯人は、風だ!」

「へ?」

「風が、花粉を飛ばしてみんなを痒~く、つらいめに合わせていたんだ。我慢ができなくって掻いてしまったところで、大切な荷物が風に飛ばされてしまったんだね…」

その時強く風が吹いた。

「さむ~い」

ブルブルくんの、頭にかぶったマスクがパラシュートみたいになって、空高く飛んで行ったとさ。

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