「なぁなぁ、俺この前ネットで面白いもの買ったんだぜ」
「へ~どんなものを買ったんですか?」
平日の夜10時、酒を交わしながら会話をする男性が2人。
「昔アニメで、戦闘能力を計れる機械あっただろ?作本は若いから知らないかな、ドラゴンボールのスカウター。」
「知ってます柴田さん!再放送でよく観てましたから。」
「お、知ってるのか~。じゃじゃ~ん。私が手に入れたものはこれです~。」
「え?スマホじゃないですか、それ。」
「違うぞ、これはな、まるでスカウターのように、本当に人を数値化できるのさ。」
そう言うと柴田は、作本を席から立たせて、手に持っていたスマホのような機械で写真を撮るような仕草をとった。
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「おお!音がそっくりじゃないですか!?」
「作本の数値は~【106】!」
「それって良いんですか?」
「普通だな。平均的に健康体だと80~120くらいの数値が出るらしい。顔色や、体型、脈拍の音、ニオイをもとに、数万人のデータと比較して数値化されるんだとさ。」
「へ~なかなかロジカルなんですね。」
「そう。すごいだろ。あと、この数値は計測のたびに少しずつ変わるんだよ。例えば・・」
柴田はスカウターを作本に持たせ、自分の数値を測定すると【91】だった。
測定をしたまま、柴田は持っていたタバコに火を点けて一服し始めたところ、その数値は【84】に減少した。
「うわ、やっぱタバコって数値下がるんですね」
「そうなんだよ、この機械の面白いところが、食べているものや飲み物もスカウターと一緒に計測すると、数値が上下するんだ。作本、俺を映したままにしておいてくれよ」
「例えば、このポテトフライ。少量を持ってるだけだと変化しないけど、お皿ごと全部一緒に映すと。」
「あっ【82】に下がりました!」
「な、やっぱり塩分や油分は過剰に摂取したらダメってことさ。」
「というか、もう柴田さん健康体ギリギリの数値になってるじゃないですか。」
「大丈夫さ、タバコとポテトフライを画面から外したら、もとの数値に戻るから、こうやって美味いものを食べられるうちは健康体ってことさ。がはは。」
「でも、毎日の積み重ねって、結構大事だと思うんですけどね~」
「作本!若いうちからそんなこと気にすんな。がはは。ほらもっと飲めよ。すいません、生ビール追加で~・・」
2人から少し離れた席で、白髪の老人が一人で食事をしていた。
柴田と同じスカウターを手にしている。
「いやいや若いの。ワシの開発した健康スカウターは、そういった毎日の積み重ねのデータもちゃんとクラウドデータに保存していっておるぞ。」
すると老人は酒が回って今にも酔いつぶれそうな2人にスカウターを向け、計測を行った。
柴田【79】
「酒もすすんで、結局ポテトも全部ひとりで食べよった。明日の朝になっても、こりゃ彼の平常値には戻るまい。」
作本【95】
「かわいそうに、酒に弱いのにたくさん飲まされて、しかも目の前でタバコを吸われとるせいで、その副流煙によってかなり数値が落ちたな。」
すると、老人は通信機能で、柴田のスカウターにアラートメッセージを送信する。
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「健康スカウター管理局より忠告
❶禁煙をお勧めする。今からでもタバコをやめた場合、早ければ5年~10年で気管支炎・喘息のリスクを一般レベルまで下られます。それから人前ではタバコを吸わないこと。副流煙は喫煙者以上に周りの健康に悪影響があります。
❷お酒は適量を守り、飲みすぎないこと。1日目安量としてビールであれば500ml、日本酒なら1合、ワインであればグラス2杯ほど。特に赤ワインには健康に良いポリフェノールが豊富に含まれているので脂っこい食事と一緒に飲むとよいです。」
「あれ、柴田さん、スカウターに何か通知が来てますよ。」
「ん~、なんだか、忠告って書いてあるぞ、、作本、読んどいてくれ、、うっ、俺は気分悪いし、ちょっとトイレに行ってくるから~。」
「もう、しっかりしてくださいよ~。明日も仕事ですよ。」
スカウターのメッセージを読んで以後、作本は自らの健康を考えて、柴田との酒の付き合いを控えるようになったそうだ。
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