細胞たちの逆襲 ?健康ってなんだ??

作者:八巻 孝之

 * プロローグ

 ここは人間の体内。正式名称は『ヒロシ・ボディ株式会社』。その社員数はおよそ37兆。心臓支社、脳支社、肝臓支社…無数の部署があり、細胞たちは昼夜問わず働いている。

 だが、ここ数年、この会社の経営は危機的状況にある。

 理由は一つ???社長(つまり体の持ち主のヒロシ)が、全く健康に興味がないからだ。

 暴飲暴食、運動不足、睡眠不足、ストレス過多、さらには喫煙まで。

「おい!またポテチだ!脂質警報発令!」

「肝臓支社がパンク寸前です!昨日も深夜まで飲酒!ウイルス課も同時に対応中!」

「心臓支社から至急の応援要請!血圧が…ヤバい!」

 細胞たちは今日も叫びながら走り回っていた。

 

 * 炎上する肝臓支社

「おい、またかよ!」

 白血球課の主任、リーコ・キュート(通称:リーコ)は、真っ赤に腫れ上がった肝臓支社を見て頭を抱えた。

「どうしたんだ、今度は」

 隣で酸素供給部の赤血球・アカッパが駆けつける。

「見てわかんだろ。昨日の夜中、焼き肉からのラーメン、その後ビール三缶、〆にコンビニスイーツ。しかも寝たのは深夜3時だ。」

「終わってんな…」

 肝臓の解毒部門は今、炎上どころか爆発寸前だった。

「お願い、もう無理!脂肪肝ラインがオーバーフロー寸前よ!」

「こっちは中性脂肪倉庫が…もう…!」

 細胞たちの悲鳴が飛び交う。

 * 会議「健康ってなんだ?」

 そんなある日、脳支社・前頭葉企画部から一通の通達が来た。

「全細胞対象。健康に関する意識向上会議、開催決定」

 ざわつく各部署。

「今さら意識高い系かよ…」

「無駄無駄、社長が変わらなきゃ無意味だって…」

 だが、参加は義務。

 会議室には、免疫課のリーコ、赤血球のアカッパ、筋肉支社からのムッキン、腸内細菌連合のビフィオ、そしてストレス対策部のセロトニン係長まで集まった。

 司会の前頭葉課長が口を開く。

「さて、皆さん。我々の社是である『健康』とは、一体何でしょうか?」

 沈黙。

「…どうせ社長が変わんない限り…」

「ああ、でもよ…もし社長がぶっ倒れたら、俺たちも終わりなんだぜ?」

 その時、腸内からオンラインでビフィオが接続する。

「うちの現場、最近ほんとにヤバいんスよ。社長、野菜食わないし、発酵食品ゼロ。腸内フローラ崩壊寸前ッス。」

 ムッキンも腕を組んでうなる。

「筋肉支社も同じだ。運動不足で筋繊維がどんどん減ってんだよ。ミトコンドリアたちも泣いてるぞ。」

 リーコが静かに言う。

「…私たちは、社長のために働いてる。でも、社長自身が自分の体を大事にしてない。……本当にそれでいいのか?」

 会議室が静まり返る。

 

 * 小さな反乱

 数日後、細胞たちはついに決意する。

「やろう。体内から社長にメッセージを送るんだ。」

 方法は、『不調という名の通知』。

 - 肝臓支社:軽い疲労感とだるさを発信

 - 腸内:下痢と便秘のコンボ攻撃

 - 心臓支社:動悸と軽い息切れ

 - 筋肉支社:肩こりと腰痛

 そして、前頭葉企画部は渾身の通知を作成。

「このままじゃマズイ」

 強烈な不安感。

 ???ヒロシの脳内で、ある日突然、ふとこう思う。

『最近、なんか体が重いな…ちょっと健康診断でも行くか…』

 細胞たちはガッツポーズ。

 

 * そして、少しずつ……

 健康診断の結果は、思ったより悪かった。

「脂肪肝、血圧高め、血糖値もギリギリ。あと中性脂肪が…」

 医者にこう言われ、ヒロシは少しだけ心を入れ替えた。

「よし、ちょっと歩くか」

 その瞬間???

「運動だ!運動キター!!」

「ミトコンドリア工場、稼働率アップ!」

「酸素供給部、ルート拡張開始!」

「ドーパミン係長、やっと出番だ!」

 体内はお祭り騒ぎ。

 さらにヒロシは、スーパーで野菜とヨーグルトをカゴに入れた。

「ビフィオ先輩!支援物資到着です!」

「生きててよかったッス!」

 徐々に体内のインフラは回復し、細胞たちの顔にも笑顔が戻った。

 

 * エピローグ

 体内掲示板に、新たなスローガンが貼り出された。

『健康は、社長一人のものじゃない。我々全員の未来だ』

 そして今日も、ヒロシ・ボディ株式会社はなんとか稼働を続けている。

 もちろん、たまには暴飲暴食もある。でも、前よりはずっとマシ。

 リーコもアカッパも、今日も笑いながらこう言う。

「ったく、社長ってやつは…でも、まあ、頑張ってるか。」

 そして、細胞たちの小さな戦いは、まだまだ続いていく???

おわり

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